隠岐島前・海士町から狼煙があがった「高校魅力化プロジェクト」。

いまや全国にひろがる地域✕教育の様々な物語は、海士町にある島根県立隠岐島前高校からはじまりました。

10年前、地域唯一の高校である島根県立隠岐島前高校は、生徒数の減少により統廃合の危機を迎えていました。高校が廃校になると、高校生が地域からいなくなるだけでなく、働き盛りの親たちが家族ごと島を出てしまう…。人口減少に歯止めがきかず、地域の少子高齢化はますます加速、伝統行事や一次産業は担い手不足で衰退し、地域の活気は失われ、やがて島に住む人がいなくなる…。そんななりゆきの未来が予想されました。

そんな中、地域が活路を見出したのは、生徒が行きたくなる、保護者が行かせたくなる、地域が活かしたくなる、そんな「魅力的な学校をつくる」ことでした。

様々な立場や意見の違いはありましたが、お互いの島への想いや子どもたちへの想いを共有し、互いに折り合いながら、少しずつ連携を進めてきたそうです。その結果うまれたのが「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」。

プロジェクトはこれまで、日本各地から意志ある入学者を募る「島留学」制度や、地域住民が島留学生の支援をする「島親さん」制度、実際に現場に山積する地域課題にチームで協働的に取り組む課題解決型の探究学習の構築、学校・地域連携型公立塾「隠岐國学習センター」の設立など様々な取組を進めてきました。

現在では、離島・中山間地域では異例となる生徒数の倍増を実現し、日本全国、さらには海外からも生徒が集まる高校になりました。同時に、高校への地域内進学率も高まり、子どもたちの地域外流出に歯止めがかかりました。

生徒たちは学校だけでなく島全体で学び、地域に活気をもたらしています。

海士町への影響を見てみると、観光や人口などにとどまらず、高校生が担い手となることで地域の祭りで神輿が復活するなど文化面にも波及していることがわかりました。

「いつかこの島に戻ってきたい」と言う生徒も現われはじめています。

学校や地域が魅力的になると、地域に子どもが留まり、若者が流入する。そして未来の担い手が増えることで、地域の文化・産業が継続・発展する。最終的には、それがさらなる魅力につながり、好循環を生み出すのです。

海士町における教育改革の実践はまさに「オセロの角」と言えるかもしれません。この実践が日本の未来を切り拓くことにつながると信じて日々の活動に取り組むリーダーたちと、そして自分たちらしい挑戦を続ける高校生たちと、教育✕地域の未来について語りましょう。

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